「ゆずるこころ」

可児市 天竜寺 住職 太田恒次 師

昨年の末にPTAのお母さん方と一緒に比叡山延暦寺にお参りする機会がございまして、その際に比叡山の高僧にありがたいお話を聞くことができましたので、その時のお話を少しさせていただきます。

相手が子供のみえる母親ということもあり、高僧は、最近のご家庭の教育について、あまり良い教育が行われていないのでは・・・と話し始めました。

高僧は昔から子供が来ると良くこの質問をするそうです。

その質問とは自分と二人の友達がいて、一つのパンをもらいました。その時、君たちはどうするかというものでした。

最近は一人っ子が多いからなのでしょうか。じゃんけんをして勝った人が一人で食べる。また、けんかに強い自分が食べる。面白いものではバイオの力で三つに増やし、みんなで食べるといったものもありました。

ただ、少し昔であるならば、三つに分けて食べるという答えが多かったようです。

しかし、その高僧は続けます。但し、それは学校の教育では正しく、満点でありますが、仏様の教えを説くのであれば、自分は食べず、食べたい友達に譲る、これが正しい。と。

それを聞いて、道元禅師の「自未得度先度他」の心を思いました。簡単に言いますと自分の事よりも相手にゆずる、自分の幸せより他を幸せにしたいと願う心、それこそが菩薩の行いであり、大切という教えです。

中々難しいことではありますが、この心があれば、多くの諍いは無くなり、多くの人が幸せになるでしょう。

もし、お子様やお孫様がおみえになれば、どのように答えるか試してみてはいかがでしょうか。

一人で食べると答えたなら、分け合う素晴らしさやゆずるという尊さを正しく教え導いていただければとおもいます。